能登半島地震から1年が経ちました。

能登半島地震から1年が経ちました。
犠牲となられた方々とご遺族に哀悼の意を表すとともに、今なお困難な暮らしを余儀なくされている多くの方々に一日も早く安らかな日々が戻られることをお祈りします。

小松左京は1995年の阪神淡路大震災が発生した直後から災害の様々な問題を記録し、悲劇を繰り返さぬために被災地の取材と災害に係わった人たちとの対談を重ね、それを週一回の新聞連載の形で発信しました。
しかし、取材を通し自らの育った阪神間の惨状の実態をより深く知ることにより、自身のメンタルがしだいに衰えていきました。
新聞連載中の精神病理学者の野田正彰さんとの対談において、被災された方々にとって形あるものの再建だけでなく、身体とともに心のケアがいかに重要であるかの問題提起をしています。

小松:トラウマですね。僕も今度、アメリカの友人から言われました。日本はいったいカウンセリングはどうなっているのか、アメリカだったら大学でさえちゃんとある、と。日本では言葉は知っていても、実態はほとんどの市民が知らない。だけど、今度初めてそれが必要なことが、一般市民社会にかなり印象として出てきた。これから先の日本の医療体系は、ただ投薬して、CTスキャンをかけて、手術して、ケガが治ったからいい、ということではないだろうとね。そういう問題もわれわれの社会の中にあると分かった。人間は心をもって生きているのだから。しかも、今度の場合、家がつぶれたり、年取った自分の親が亡くなったり、子供が亡くなったり、小さな子供が両親を亡くしたり、それぞれトラウマが違うだろうから、ケース・バイ・ケースで対応して、それが潜在的になってきても、それを社会的にちゃんとトレースすれば、アメリカに比べれば少し地味かもしれないが、取り組めないことはないのです。これは僕らにとって非常に難しい問題ですが、アメリカの場合は、ほとんどの都会生活者は、主治医の中にカウンセラーを持っています。アメリカではカウンセラーが活躍していて、ベトナム戦争では現地にまで行きましたね。日本もこれを機会に、精神医療体系を、社会的に一種の厚生面で、非常に大きな改変をする必要があるだろうという感じを持っています。

毎日新聞「大震災’95」掲載【95・12・9】

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