WOWOW アニメと実写で「日本沈没」スペシャル

 『日本沈没』は1973年、長編書下ろし小説としとて発表され、上下巻380万部という大ベストセラーになった作品です(後に様々な出版社から出版され、総数は490万部を超えました)。
 日本人が未曾有の地殻変動で、国土である日本列島を失うという極限状態を描いた物語はいつの時代も人々を惹きつけ、これまで幾度となく映像化されてきました。
 2022年7月19日(火)から始まる、WOWOWの『アニメと実写で「日本沈没」スペシャル』では、これまで映画化された全ての「日本沈没」(筒井康隆先生原作の「日本以外全部沈没」を含め)を放送します。

目次

日本沈没(1973)

7/19(火)午後6:30    8/3(水)午後1:00

 1973年3月、小説発表直後から話題となり、上下巻合わせて380万部というベストセラーとなった『日本沈没』(その後、文庫化などもあり累計490万部を超えました)。

光文社カッパノベルズ「日本沈没」上下


 その同じ年の暮れに、当時の金額で5億円(大学初任給は6万2千円ほど。映画料金も800円でした)という破格の製作費をかけ、公開された映画「日本沈没」は、邦画として初の配収20億円の大台にのりました。
 企画したのは、「ゴジラ」や黒澤明監督作品など映画史に残作品を数多く手がけた田中友幸プロデューサー。黒澤明監督の助手を長くつとめ、この後、「八甲田山」「海峡」「小説吉田学校」など数多くの名作を世に送りだす森谷司郎監督がメガホンを取りました。


 脚本はベネチア映画祭を受賞した「羅生門」を黒澤監督と共同脚本する形でデビュー、日本の一番長い日」や「八墓村」など日本映画史に輝く名作を多数手がけた橋本忍先生。その構成力と台詞の数々は素晴らしく、小松左京が訴えたいメッセージを、小説とは異なる手法で強く観客に印象づけました。


 俳優陣は、主人公、小野寺俊夫を藤岡弘、さん、ヒロイン阿部玲子をいしだあゆみさん、山本総理を丹波哲郎さん、渡老人を島田正吾さん、そして田所博士を小林桂樹さんと大変豪華なものでした。
特に小林桂樹さんは、日本列島が沈みゆく事実をいち早く気づき、この国の全てを愛するあまり悩み苦しみながらも粉骨砕身する孤高の科学者を見事に演じていました。火山灰が降りしきる中、丹波哲郎さん扮する山本総理と田所博士の別れのシーンは圧巻です。


 この作品のもう一つの要である特撮は、円谷英二特技監督の愛弟子であり、先日惜しくも逝去された中野昭慶特技監督が担当されました。
 中野特技監督は徹底してリアルな描写にこだわり、映画のプロローグで描かれた実寸大模型の深海潜水艇わだつみの潜水シーンから、特撮を駆使した深海での列島沈没の前兆現象発見シーンまで、科学ドキュメンタリー映像のようなリアリティーで迫ります。また、第二関東大震災のシーンでは、中野昭慶特技監督は原作を読みこなすだけでなく、自らも専門家の意見を聞くなどし、ただの特撮のスペクタクルシーンを超える、まるで大地震のまっただなかに放り込まれたような、恐るべき映像となっています。
 

日本沈没(2006)

7/20(水)午後6:30   8/4(木)午後1:00

 「日本沈没(2006)」は、製作費20億という超大作として、2006年7月に公開され、興収56億円、この年の邦画ランキング第4位のヒット作になりました。
 監督には『日本沈没』の原作、映画、ドラマいずれにも深い思い入れのある樋口真嗣監督。
 出演は主人公・小野寺俊夫に草彅剛さん、ヒロイン阿部玲子に柴咲 コウさん、田所博士を豊川悦司さん、さらに総理大臣に石坂浩二さん、田所博士の元妻で、危機管理担当大臣には大地真央さんと、大変豪華なものでした。  

 また、樋口監督と同じく「日本沈没」の大のファンで、本作のメカニックデザインを担当した庵野秀明さんが奥様の安野モヨコさんと揃って日本を脱出する役で出演され、また「機動戦士ガンダム」を生んだ富野由悠季監督が、貴重な仏像の国外への搬出を見送る僧侶の役で出演されています。
 日本を代表するアニメ監督である冨野監督ですが、1995年、小松左京のSFとして最も評価の高い「果てしなき流れの果に」のアニメ化プロジェクトで監督して抜擢されていました。残念ながらプロジェクトは実現せず、幻のアニメ企画となりました。

 最新VFXを駆使し描かれ、日本各地を襲う地殻変動の数々は、現実の映像かと錯覚するほどの凄みのあるものですが、この映画にさらにリアリティーを与えていたのは、しんか2000、しんかい6500という本物の有人潜水調査船二隻と、2005年に完成したばかりの地球深部探査船ちきゅうの協力でした。
 いずれもJAMSTEC(海洋研究開発機構)所属の船で、地震のメカニズム解き明かすための深海や地球の内部構造を探る数々の重要なミッションにも対応しています。
 現在も世界トップクラスの性能を誇るしんかい6500(劇中では、わだつみ6500)は、映画冒頭から活躍をつづけ、また、当時完成したばかりの、地球深部調査船ちきゅうは、高さ70m(船底からだと130m)で、地殻の下のマントルまで採取可能とする巨大な採掘やぐらを備えたもので、劇場の巨大スクリーンにおいても圧倒的な迫力を与えていました。
 しんかい2000(劇中では、わだつみ2000)は、撮影当時既に引退していましたが、他の二隻同様、劇中で重要な役割を演じます。


 

「しんかい2000」 JAMSTEC(海洋研究開発機構)
「しんかい6500」 JAMSTEC(海洋研究開発機構)
「ちきゅう」 JAMSTEC(海洋研究開発機構)

日本以外全部沈没

7/21(木)午後7:15   8/2(火)午後1:00

 『日本沈没』は出版された翌年の1974年に星雲賞の長編賞を受賞しましたが、その年の短編賞は筒井康隆先生の「日本以外全部沈没」が受賞しました。
 そして30年余りの年を経た、2006年7月、「日本沈没(2006)」が劇場公開されましたが、わずか2ヶ月後の9月に河崎実監督による映画版「日本以外全部沈没」も公開されています。
 この映画には、1973年版映画「日本沈没」で主人公小野寺俊夫を演じた藤岡弘、さん、1974年のテレビドラマ版「日本沈没」で主人公小野寺俊夫を演じた村野武範さんまでも登場しています。
 原作者である筒井康隆先生も出演し、小松左京にもカメオ出演のお話があったとのことですが、熟慮(?)の結果、辞退しています。

 思い出したのは筒井康隆さんが書いた『日本以外全部沈没』のことだ。構想、執筆に九年を費やした『日本沈没』のパロディで、わずか一週間で書き上げた。『日本沈没』は昭和四十九年度にSFファンが選ぶ星雲賞の長編部門を受賞した。ところが、同時受賞の短編部門が『日本以外全部沈没』だったので思わず吹き出した。

                       <中略>

 『日本以外全部沈没』も映画になった。私にも出演依頼が舞い込んだが、やっぱり断った。筒井さんとは古いSF仲間で、彼の仲人は私たち夫婦なのだが、出来が良すぎるパロディを書かれた原作者は、実はいつまでも根に持つのである。

                                                 『小松左京自伝』より

 

日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-

7/22(金)午後6:15   8/1(月)午後1:00

 「ピンポン THE ANIMATION」、「夜は短し歩けよ乙女」、「夜明け告げるルーのうた」、「DEVILMAN crybaby」、「映像研には手を出すな!」など、国内だけでなく世界的にも高い評価を受けている湯浅政明監督により、2020年7月にNetflixオリジナルアニメ「日本沈没2020」として全世界配信された全10話を、湯浅政明監督みずから劇場映画として151分に再構築したもので、2020年11月に「日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-」のタイトルで全国公開されました。

 小松左京原作のアニメとして二作目、そして「日本沈没」の初アニメ化にあたる「日本沈没2020」は、これまでの「日本沈没」の映像化やコミック化作品と異なり、令和の時代に生きる一般的な家族にスポットを当てた作品となりました。
 日本列島が海の底に没するという未曾有の地殻変動の中、必死の脱出を試みる人々の姿を、容赦のないエピソードを積み重ねて描くことで、原作のテーマである「日本そして日本人とは何か?」を、湯浅監督独自の視点で浮き彫りにしていきます。

WOWOW アニメと実写で「日本沈没」スペシャル 放送スケジュール

下記のWOWOW公式サイトでご確認ください。

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