日本初の本格的エスパー小説『エスパイ』
超能力を持つスパイの活躍を描く『エスパイ』は、小松左京の3作目の長編にあたり、2015年6月に発刊50周年を迎えます。
1965年に早川書房から出された初版の『エスパイ』の解説で、当時、SFマガジンの編集長であった福島正実先生は、この作品を「わが国で書かれたはじめての本格的なエスパー(超能力者)小説」と紹介してくださいました。
『エスパイ』は、連載小説をまとめたものですが、その連載先は、なんと『週刊漫画サンデー』。同じ時期に掲載されていたのは、山田風太郎先生の傑作『甲賀忍法帖』でした。
1974年には、藤岡弘さん、由美かおるさん主演で映画化もされ、映画『日本沈没』(2006年版)の樋口真嗣監督をはじめ、今も多くのファンがいらっしゃいます。
・電子書籍リリース 『角川文庫・小松左京電子書籍コレクション』
2015年1月28日配信(同時リリース作品『復活の日』『明日泥棒』)
・特典1 生賴範義先生による1978年の角川文庫版オリジナル表紙。
小松左京の作品で最もエロチックと言われている『エスパイ』。生賴範義先生が描く表紙
もゴージャスでセクシー。そして、スパイものらしく緊迫感あふれた素晴らしいものです。
・特典2 小松左京の没後発見されたエスパイ創作メモ(電子書籍初掲載)
スパイ小説に興味のなかった小松左京が、いかにSFとスパイものを融合させるか
苦労した跡が垣間見える、創作メモを電子書籍として初掲載しました。
【没後に発見された『エスパイ』創作メモと解説を収録】
『エスパイ』は、超能力をもったスパイが活躍する物語ですが、当時の小松左京は、スパイ小説やスパイ映画にはほとんど興味を持っていませんでした。
興味のないスパイ分野で、編集者の要請によるエロチックシーンや活劇シーンといったサービス描写への取り組み、そして、SFをいかに理解してもらえるかの葛藤と毎週苦労の連続だったようです。
小松左京の遺品整理で『エスパイ』に関する創作メモが見つかりました。
様々なアイデアが記されていますが、なかなか本編に生かされたものがなく、苦労の跡がうかがえます。
アイデアを纏めるためのノートへの走り書きなので、けっして読みやすいものではありませんが、創作過程の断片をご覧いただくことで『エスパイ』という作品をより楽しんでいただけるきっかけになれば幸いです。
タブレット端末の拡大機能で興味ある個所を拡大しお読みいただければと思います。
<創作メモが書かれていたノート>
下位置に記された「小松 実」は小松左京の本名
<エスパイ創作メモの一部分>
国際情報局の局長はノンエスパー、盲目の貝を飼っている(ホタテ貝の絵も)。
◎超能力をつかえない暗示。
敵のエスパイに自分の志向を隠すために道楽を持つとされます(玩具やアルコール、女道楽など)。
007のように名前とは別に番号を持っている。
*電子書籍では創作メモの全部と解説が閲覧できます。
<劇場版『エスパイ』>
『エスパイ』は、1974年、小松左京の作品としては『日本沈没』に続く2作目の劇場用映画になりました。
劇場版『日本沈没』(1973年公開)の主演であった藤岡弘さん、後に角川映画『復活の日』(1980年公開)の主役となった草刈正雄さん、また1974年のテレビドラマ版『日本沈没』のヒロインの由美かおるさんといった小松左京作品に縁の深い方々がクレジットされています。
この映画には熱狂的なファンの方も多く、2006年の劇場版『日本沈没』の樋口真嗣監督は、『完全読本 さよなら小松左京』(徳間書店)の座談会の中で、新たな劇場版『エスパイ』を作りたいと語られています。
参考<角川文庫・小松左京電子書籍コレクションリリース予定タイトル>
日本アパッチ族(2014年12月リリース)
復活の日(2015年1月リリース)
明日泥棒(2015年1月リリース)
エスパイ(2015年1月リリース)
青い宇宙の冒険
見えないものの影
宇宙漂流
見知らぬ明日
果しなき流れの果に
神への長い道
模型の時代
こちらニッポン・・・(上)
こちらニッポン・・・(下)
ゴエモンのニッポン日記
旅する女
霧が晴れた時自選恐怖小説集
地には平和を
召集令状
継ぐのは誰か?
短小浦島
結晶星団
明日の明日の夢の果て
ゴルディアスの結び目
ウインク
牙の時代
最後の隠密
怨霊の国
御先祖様万歳
時の顔
鏡の中の世界
青ひげと鬼
三本腕の男
蟻の園
氷の下の暗い顔