2016年3月4日『首都消失』初の電子書籍化
『日本沈没』(1973年)や「アメリカの壁」(1977年)など一連のシミュレーション小説としては、最後の作品となる『首都消失』(1985年)が、小松左京生誕85年、没後5年を記念し、徳間書店より初電子書籍化されます。
<日本の首都が消える、究極の危機管理シミュレーション小説、初の電子書籍化>
ある朝突然、東京が半径約30kmの正体不明の雲に覆われ、日本は、外交、防衛、経済、メディアといった様々な機能の中核である首都を突如失ってしまう。
『首都消失』は、そんな危機的状況をリアルに描き、一極集中が進む日本の脆弱性に警鐘をならした作品です
ブロック紙の大手三社、中日新聞、西日本新聞、北海道新聞において、1983年12月から一年余りにわたり連載されたもので(中日新聞東京本社が発行している東京新聞でも掲載)、1985年には 第6回日本SF大賞 を受賞、1987年には渡瀬恒彦さん、名取裕子さんらの出演で劇場映画化もされました。
また、単行本、文庫本の上下合わせ150万部を超え、小松左京にとって『日本沈没』に次ぐベストセラーとなりました。
今回、小松左京の生誕85年、没後5年にも関連し、発表から40年余りを経て、初めて電子書籍化されます。
<リアルさ追求のために、浅間山荘事件の佐々淳行さんに助言を求める>
『首都消失』では、東京が直系30kmにもおよぶ謎の雲に覆われることで、日本の外交、防衛含め、全ての政治的機能が停止してしまいます。
そんな日本経済をどのように維持するか、メディアの発信機能が失われた中での対応、アジアにおける軍事的空洞化の問題、そして、なんといっても、これらの難関をコントロールするために、失われた政府に代わるシステムが必要となります。
この点に関して、小松左京にアイデアを与えてくれたのは、よど号事件や浅間山荘事件を指揮した危機管理のエキスパートである、佐々淳行さんでした。
あのころ東京の一極集中がこのまま進んだらどうなるかという話が出てたんだね。まず、突然東京が壊滅したらどうするか。僕もアイデアがなかったんだけど、一応水爆戦を想定して、佐々淳行さんに「そういう場合、日本の政治システムはどうなるでしょう」って訊いたら、彼はどこかに電話して、そしたら「全国知事会議でしょう」って。
『SF魂』(新潮社)より
佐々淳行先生は、このエピソードから暫く後の一九八六年に、初代内閣安全保障室長に就任されました。
<とり御飯弁当>
『首都消失』のオープニングは、ブロック紙連合での連載ということもあり新幹線の名古屋駅の場面から始まりますが、そこに登場する小松左京の好物「とり御飯弁当」(現在は、「特製とり御飯」)が、当時話題になりました。
それから名古屋は「とり御飯弁当」がうまくて何度も書いたら、販売している松浦商店がものすごく喜んで表彰状みたいな礼状くれたけど、「あれがうまいのはわかったから、弁当の話はもうやめろ」って投書も来た(笑)。
『小松左京自伝』(日本経済新聞出版社)より
『首都消失』本編から、「とり御飯弁当」の描写を引用するとこんな感じです。
「仕事の性質上、日本各地への出張の多い朝倉だったが、その彼の長年の経験からしても、名古屋駅の「とり御飯弁当」は、その良心的な値段と質からいって、駅弁の傑作の部類にはいり、まして新幹線の駅で買える弁当としては、最高点をつけたい所だった。味つけ御飯の上に、さらりとした鶏と卵のそぼろが二色にのっていて、あと鶏の手羽の煮つけ、笹身のフライ、鶏ソーセージにかまぼこといったあっさりした構成だが、一品一品が、いかにも駅弁、汽車弁として年季のはいったしっかりした仕上りで」
『首都消失』(徳間書店)より
「特製とり御飯」(画像提供 松浦商店)
今では、中身も豪華に進化し、名前の方も「特製とり御飯」となり、時代の流れもあって値段も変わりましたが、鶏と卵の二色のそぼろのベーシックな部分は当時と同じです。
<電子書籍版『首都消失』概要>
【出版社】徳間書店
【希望小売価格】本体1000円+税
【配信電子書店】 Kindleほか
【電子オリジナル特典】
・生賴範義イラスト1点
・劇場版「首都消失」ポスター
・小松左京直筆原稿
・小松左京ライブラリ解説
【徳間書店ホームページ】
<DVDも絶賛発売中>
『首都消失』の単行本が大ヒットしたことから、一九八七年に映画化されました。
監督は、「嵐を呼ぶ男」や「二百三高地」、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズなど超大作からアニメまで、数多くの作品でメガホンをとった舛田利雄監督。
特撮は、一九七三年の劇場版「日本沈没」において、リアルで鬼気迫る映像を創りだした中野昭慶監督。
名取裕子さん、渡瀬恒彦さん、山下真司さん、夏八木勲さん、財津一郎さんといった豪華なキャスティングでした。
劇場版「首都消失」のポスターデザインは、「スターウォーズ/帝国の逆襲」、「ゴジラ」等のポスター、また、角川映画「復活の日」のイメージイラスト、二〇〇六年版「日本沈没」のポスターなど、小松左京とも係りの深いイラストレーター生賴範義先生です。文庫版『首都消失』、また今回の電子書籍版『首都消失』のカバーもその絵が使われています。
発売元:KADOKAWA
販売元:ポニーキャニオン
価格:¥3,800(本体)+税