『青い宇宙の冒険』は、1970年に『中1計画学習』と言う中学生向け学習雑誌に連載されたものを、1972年に大幅に書き換えたもので、長さも倍になり、登場人物も増えていることから、全くの書下ろし作品と言ってもよい作品です。
小松左京の長編SFジュブナイルとしては『見えないものの影」(1967年)『空中都市008』(1968年)、『宇宙漂流』(1970年)、に続く第4作目にあたります。
(カッコ内はいずれも刊行年)
小松左京の作品には、『日本沈没』のようなシミュレーションもの、『日本アパッチ族』や『明日泥棒』のような風刺もの、『くだんのはは』といったホラーと様々なジャンルがありますが、本作『青い宇宙の冒険』は、『果てしなき流れの果に』や『虚無回廊』といった宇宙の本質をテーマにした作品に連なるものです。
小松左京は、宇宙と人類という最も壮大で難しいテーマを少年少女向けのジュブナイル作品にするために、あらゆるノウハウを駆使しています。
ミステリアスな怪奇現象、過去と現代を繋ぐ古文書や伝承などのアイテム、『果てしなき流れの果に』の後継となるこれらの要素に加え、冒険、友情、思春期の揺れ動く心といったジョブナイルらしいアレンジが加わり、小学生でも楽しめるエンターテイメント作品となっています。
けれど、この作品は、単なるSFエンターテイメントではありません。
謎に満ちた宇宙の素晴らしさ、人と宇宙の関係を若い読者に伝え、この本をきっかけに様々な知識をもってもらいたいとの思いを込めて書いています。
特に科学的な知識に関しては、物語にそって可能なかぎり自然に、そして、本質を押さえた上で判りやすく紹介しています。
小松左京本人があとがきで「思いきって、少しむずかしいところもそのままにしておきました」と述べていますが、通常の小松左京の作品に比べると遥かに判りやすいものなので入門篇としてお読みいただければ幸いです。