怨霊の国

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『怨霊の国』には、小松左京のホラー短編十四作品が収録されています。

じんわりと恐怖が伝わる話、世にも恐ろしいショッキングな話、切なくなるような不思議な話、そうかと思うと、コミカルなもの、エロチックなものと様々なバリエーションが楽しめます。

 

「保護鳥」は、今も高い評価を受けている小松左京の代表的なホラー作品です。

異国の地の深い森の中、村人たちに大切に保護されている鳥。

日本人旅行者が興味を抱いたその鳥の正体は。

重苦しいほどにリアルな恐怖世界が繰り広げられます。

 

「安置所の碁打ち」は、ごく普通の日常を舞台に、淡々と物語が進んでゆきますが、その静かさが、根源的な恐怖心をより湧き起こさせます。

どこかの病院を舞台に、看護師たちが、声を潜めて語る都市伝説ではないかと思わせるお話です。

 

「怨霊の国」は、この世と、もう一つの世界、そしてその二つの世界を繋ぐ存在となってしまった女性の悲劇を扱った作品です。

女性を、この世と異なる得体のしれない世界をつなぐ、媒体者的なイメージで捕えた小松左京の作品はいくつかありますが、 「怨霊の国」 は、コズミックホラーとして評判の高い「ゴルディアスの結び目」との関係が深いと考えられます。

竹の変種やネズミなどが人類を脅かす「笹の花」は短い作品ですが、「復活の日」や、「見知らぬ明日」といった長編に匹敵するほどの、絶望的な終末観にあふれています。

小松左京は、親友の作家、開高健先生のネズミが大増殖した際の混乱を描いた「パニック」を高く評価しており、「笹の花」は、小松左京なりの、開高健先生の「パニック」へに対するアンサーともとれる作品となっています。

 

「靴屋の小人」は、謎の存在が、夜中にこっそり工場で優秀な製品を作ってくれるお話です。

妖精や異界の住人が、親切に助けてくれる伝説伝承は世界各地にありますが、この謎の存在は、小松左京のある代表長編と繋がっています。

「幸福にも不幸にもならない手紙」は、 流行というものの本質を、小松左京流に切りとった作品といえます。

この作品に描かれる「幸福にも不幸にもならない手紙」は、なんとも人を小馬鹿にした内容です。

しかし、物語を読み進めていくうちに、独特の吸引力があり、あまり害のないように見えるその文面が、その本来もっている恐るべき毒をカモフラージュしているようにも感じてきます。

最も現代的で、ある意味もっとも恐ろしい作品です。

 

電子書籍版「怨霊の国」には、小松左京が描く、未発表怪奇一コマ漫画を初掲載

 

<収録作品>

かつがれ屋
安置所の碁打ち
怨霊の国
靴屋の小人
幸福にも不幸にもならない手紙
笹の花
失神時代
写真の女
女の手
人の波
大混線
知恵の木の実
保護鳥
霧が晴れた時