:原案 小松左京「お召し」 月刊flowers(小学館)に、2013年から掲載された、小松左京の短編「お召し」を原案とした「AWAY」が完結しました。

詳しくは月刊flowersの公式サイトで。

<原案・「お召し」に関して>
原作の「お召し」は1963年の『中一時代』夏臨時創刊号に「ぼくの消える日に」というタイトルで掲載されました。
翌1964年『SFマガジン』に掲載する際、福島正実先生の助言で前後を書き足した作品が現在の「お召し」です。

12歳以上の人間が突然、全て消えてしまった世界の物語です。
(なぜ12歳かというと、最初の掲載が12歳の子供対象の雑誌『中一時代』だったのが理由のようです)
小松左京の作品では、東京が雲に覆われて連絡が途絶える「首都消失」(1983年)、アメリカ以外の世界が消えてしまう「アメリカの壁」(1977年)、ごくごく一握りの人だけを残し世界中から全ての人が消えてしまう「こちらニッポン…」(1976年)、霧が立ち込めた山の中で次々と人が姿を消して行く「霧が晴れた時」(1971年)などの人が消えてしまう物語が多数あります。
その中でも、この「お召し」は、大人の消えた世界に取り残されたある子供の手記という形で語られていて、そのたどたどしい文章から置いてきぼりにされた心細さがひしひしと伝わる物語です。



「お召し」の本編の一部をご紹介します。


それにしても、なんておかしなことになっちまったんだろう。半年前のことを思うと、いま、こうして書いていることが、まるで夢みたいだ。--だけど夢じゃなくて、これがほんとなんだ。ほっぺたつねってみたって、決してさめやしないんだ。だから、こうなってしまった上は、いくらむかしのことを考えて、ベソをかいてもしかたがない。--おまけにぼくは、これからぜんぜん知らない目にあおうとしている。しょうじきいって、ぼくはこわい。だけど、こわがってもどうにもならないことはよくわかっている。世の中のしくみがそうなってしまったんだから、なんとか勇気をもってそれにたちむかいたいと思う。--だけどほんとういって、それがおこる時をじっとまっているのは、どうしようもなくこわいんだ。こわくてこわくて、体じゅうがふるえている。ただじっとまつだけでは、ふるえがとまりそうにないので、ぼく、これを書くことにした。--これはみんなの知ってることだ。だけど、三年、四年とたつうちに、はっきりおぼえてるものはどんどんへってゆく。だから、ぼくのおぼえていることを書いておいて、小さい人たちが字を読めるようになったら、読んでもらうといい。



<「お召し」の舞台化>
ドラマや映画などの映像化はされていませんが、1975年に東京放送児童劇団で「みんないなくなる日」として、また1982年には「ぼくのいなくなる日に……」のタイトルで舞台化されています。



<萩尾望都先生と小松左京>
小松左京は、根っからの漫画好きで、中でも萩尾望都先生の大ファンでした。
「モトさま、モトさま」と子供のように慕っていました。
仕事で疲れてソファーに寝転がり漫画を読む際にも、その横にはよく萩尾先生の作品が積まれていました(「ポーの一族」「スターレッド」「百億の昼と千億の夜」etc)。
さいとう・たかを先生や一色登希彦先生の「日本沈没」、石ノ森章太郎先生の「くだんのはは」、松本零士先生の「模型の時代」、モンキーパンチ先生の「時間エージェント」、そして、やなせたかし先生の「日本アパッチ族」など、小松左京の原作は様々な形でコミック化されましたが、萩尾望都先生に描いていただいたものはこれまでなく、この「お召し」が最初です。

 
 
【筋金入りの漫画好きでした】

<「お召し」と「AWAY」>
萩尾先生は、小松左京の同人誌である「小松左京マガジン」の発起人になっていただいておりました(2001年1月の創刊号にも寄稿もしてくださり、そのタイトルは「小松左京子の発見」でした)。
2013年9月に発行された最終号でもある第50巻の座談会で萩尾先生は以下のように発言されています。


だいぶ前に小松先生に「僕の作品で描いてみたいものある?」と聞かれたときに、「『お召し』を描きたいです」といったことがあるのです。バブルの頃で、このようなテーマでは受け入れられないだろうなと思っていました。でも、2011年の東日本大震災が起こってから、実際に世界が変わってしまうということがあるのだと、「お召し」がたびたび思い出されました。

小松左京の半世紀前の作品である「お召し」が、東日本大震災を経て、萩尾望都先生の手で「AWAY」という全く新しい形で蘇りました。
どのような世界が描かれ、どのようなメッセージが残されるのか本当に楽しみです。

> 萩尾望都先生の「AWAY」の最新情報は月刊flowersの公式サイトで。









<萩尾先生が描いた小松左京作品表紙>

 
【萩尾望都先生が描く「小松左京マガジン」第13巻表紙(2004年1月)】


 
【萩尾望都先生が描く「夜が明けたら」表紙(文春文庫刊 1977年)】

 
 
【萩尾望都先生が描く「旅する女」表紙(光文社文庫刊 2004年)】