未知の病原菌による、人類滅亡の危機を描いた小松左京の「復活の日」。

最悪の状況に、さらに追い打ちをかけたのは、猜疑心から恐るべき負の遺産を残した合衆国大統領でした。

狂気の存在が権力を持つことの恐ろしさ。

「復活の日」は、合衆国大統領の権力の負の一面への警鐘を鳴らしています。

 

「君には全然はなしてないし、ここにいる最高委員の中にも全貌を話していないことがあるのだ」コンウェイ提督は、怒りをこらえた調子で、室内を見まわした。「まったくバカげたことだ。そして、このバカげたことの原因は、アメリカはじまって以来の、バカげた大統領――シルヴァーランド、、、、、、、、によってつくられたものだ……」

「前大統領の……」吉住はつぶやいた。

「そう――あいつは……ほとんど考えられないくらいの極右反動で、まるできちがいじみた男だった。南部の大資本家と称するギャングどもの手先で……二十世紀アメリカのアッチラ大王だった。憎悪、孤立、頑迷、無智、傲慢、貪欲――こういった中世の宗教裁判官のような獣的な心情を、“勇気”や、“正義”と思いこんでいた男だ。世界史の見とおしなど全然なく、六年前にはもう一度“アカ”の国々と大戦争をおっぱじめるつもりだった。――なぜ、こんな男を、アメリカ国民がえらんでしまったのか、いまだにわからない。私は軍人ではあるが、あの時ばかりは、アメリカの後進性、、、に絶望した……」
「それで――そのシルヴァーランド大統領がどうかしたんですか?」

「“復讐はわれにあり、われ、これをむくいん”……」コンウェイ提督は憎悪をこめていった。

「これがやつのお得意の文句だったよ。――そしてやつは、ARS、、、)をつくった」

ARS」、、、)」

「カーター少佐!」とコンウェイ提督はいった。――ひょろりとした、見たことのない男が立ち上った。

「諸君、カーター少佐を紹介しよう。――彼は、もともと国防省の人間で、シルヴァーランド時代には、大したはぶりで、ARS計画にも参加した。次の大統領の時、左遷された恰好で、ここへやってきた。任務は――南極における諜報活動と私を監視すること、、、、、、、、)だった。――だが、すでに五、六年前のことなど、どうでもいい。今は少佐から、ARSのことについてきこう。このシステムのことを、くわしく知っているのは、米国軍人の中でも、多くないはずだ」

「ARSというのは……」と、カーター少佐は抑揚のない声で語りはじめた。「いまからざっと八年前、当時の大統領シルヴァーランドと、当時統合参謀本部の腕ききといわれたガーランド中将のつくりあげた――全自動報復装置[オートマチック・リヴェンジ・システム]のことであります……」

 

 

ARS(自動報復システム)の使用は、敵を滅ぼすためなら、あらゆるものを犠牲にしてもよいと言う狂った論理にうえに成り立っています。

そして、超大国のトップには、その狂った計画を実行に移すだけの権力があるのです。

「復活の日」が生まれて半世紀以上たった今でも、残念ながらこの危険な状態はなんら変わっていません。

 

 

 

 

復活の日表紙

 「復活の日」(KADOKAWA)

小松左京が描く超大国アメリカと合衆国大統領の真実とは?