「影が重なる時」は、1963年にSFマガジンで発表されました作品です。
米ソ冷戦構造であった当時の時代背景を考えると、ある意味リアルなラストともいえます。

1945年8月、14才で終戦を迎えた小松左京にとって、もし戦争終結がもう少し伸びていれば、自分たちも少年兵として戦争に駆り出され命を落とすはずとの想いが強くありました。
なんとか生き延びたと思ったら、米ソ冷戦時代を迎え、全面核戦争により人類が滅亡する事態もあり得ました。
小松左京は、1953年の水爆実験のニュースを知った際に衝撃を受け、「人類はこれでおしまいだ」と感じたといいます。

戦争による人類滅亡への恐怖とそれに対する警鐘を鳴らさねばという想いは、小松左京の創作の原動力となり、デビューのきっかけとなった「地には平和を」を始め、「復活の日」、「コップ一杯の戦争」、「戦争はなかった」といった様々な作品を生み出しました。
また。SF作家デビュー前の、京大時代に、核をテーマにした「第五実験室」という漫画を描いています。

第五実験室

 

京大時代の漫画「第五実験室」

幻の小松左京モリミノル漫画全集(小学館)より

本作は、発表からちょうど40年経った2003年、フジテレビの『世にも奇妙な物語』で映像化されました。
八嶋智人さんと桜井幸子さんが出演されており、影を意識したハイコントラストの撮影と静かなトーンの演出は、原作によくマッチしていました。
「影が重なる時」は、小松左京の自選ホラー短編集『霧が晴れた時』に収録されています。

霧が晴れた時

霧が晴れた時 (角川ホラー文庫―自選恐怖小説集)