『くだんのはは』は、1968年に「話の特集」で発表されました。

その物語の背景には、小松左京の戦争体験が大きく影響を与えています。

『くだんのはは』は、戦争末期のつらい日々を過ごす、小松左京の分身のような旧制中学の生徒である主人公の語りで、超自然的で恐ろしい「くだん」に纏わる、大きな渦のなかに吸い込まれるような、逃れがたい物語が展開されます。

ホラーとして大変評価が高いため、自身の作品集だけでなく、様々なホラーや幻想系のアンソロジーに選ばれ、未だに人気がある作品です。

恐ろしい物語の代表として、しばしば朗読されることもあり、女優の白石加代子さんが、22年に渡り延べ99本の怪談を語った朗読劇『百物語』においても、『くだんのはは』は選ばれています。白石加代子さんによる『くだんのはは』の語りは、鬼気迫るものがあり、特にクライマックスでは、冷水をかけられたような衝撃でした。

1970年、「少年マガジン」において、石ノ森章太郎先生により見事な形で漫画化されました。絵も構成も素晴らしく、読んだあとは、まるで一本の映画を観終わったような感じになります。この作品は、『小松左京原作コミック集』(小学館)、『平和をわれらに! (復刻名作漫画シリーズ)』(小学館)に納められています。

2015年に萩原玲二先生により新たにコミック化され、「新耳袋アトモス」(ホーム社)に掲載されました。石ノ森先生と異なるアプローチであり、主人公の顔は、少年時代の小松左京により近くなっています。この萩原玲二先生によるコミック化は、現代の怪談を集めた木原浩勝先生と中山市朗先生の『新耳袋』(角川文庫他)シリーズで『くだんのはは』が紹介されたことがきっかけでした。